パティシエ雑談 第2回【ある女性パティシエとの出来事】

スイーツをつくる意味とは?
読者の皆さんは、パティシエと聞くとどんな印象を持ちますか?
「おいしいスイーツをつくれて羨ましい」などと、憧れを持つ人も多いはず。
そこでパティシエとして様々な現場を経験しているだけでなく、お菓子の商品プロデュースまで行っている若狭薫氏の連載コラムがスタート。
ご自身の経験から様々な面白体験や恋の進展に役立つ秘密のエピソードなどを披露してくれます。

【若狭薫 プロフィール】
お菓子と生きるスイーツプロデューサー。 パティシエ歴25年、フリー歴15年。結婚・出産・育児・介護…人生の荒波を越えながら、現場にとらわれない働き方を模索。「パティシエのキャリアはひとつじゃない!」をテーマに、商品企画を通じて、新しいキャリアデザインを見つけるお手伝いをしています。
パティシエが“作ること”を手放すとき
こんにちは。
「心を癒すお菓子を創る」。スイーツコンセプトの若狭薫です。
今回は、ある女性パティシエとの印象的なエピソードを紹介します。
これは、「スイーツをつくる意味」を私自身が改めて見つめ直すきっかけにもなった出来事でした。
店を手放す決意
彼女は、30代後半の実力派パティシエ。
自分の店を持ち、子育てをしながら厨房に立ち続ける、まさに“できる人”でした。
お客様からの信頼も厚く、職人としても母としても立派に見える姿。
でもある日、彼女はふと「お店はもう誰かに渡そうと思っている」とこぼしました。
理由は決して後ろ向きなものではありませんでした。
人生の新しい節目に立った彼女は、前向きな決断として区切りをつけようとしていたのです。
ただ一方で、お菓子作りに関しては「一旦お休みしたい」
「何をつくればいいか分からない。誰のためにつくればいいかも…」
そんな迷いの言葉が、ぽつぽつとこぼれ落ちてきたことでした。
ときめくテーマだけで、いいから
私は、無理に何かを提案することはしませんでした。
代わりにこう伝えたのです。
「もし、私がお菓子のアイデアで煮詰まったら、
ときめくテーマのときだけでいいから、手伝ってくれない?」
数か月後、実際に「これ面白そうだな」と思う企画が生まれ、彼女に声をかけてみました。
すると彼女は笑ってこう返してくれました。
「何それ!楽しそう✨ちょっとつくってみるよ~。材料ちょうだい」
それは、まるでスイッチが入ったような軽やかさでした。
レシピに宿る“彼女らしさ”
彼女がつくったお菓子は、独特なレシピで、味わいもどこか懐かしくて温かい。
食べると“彼女らしさ”が前面に出ていて、それがとても良かったのです。
私は「商品化しよう」とか「また仕事にしたら?」とは言いませんでした。
ただ一緒に食べて、「やっぱりこういうのがいいよね」と話しただけ。
すると彼女は、ふとこう言いました。
「お菓子づくりの楽しさって、こういうとこだよね。
誰かが感動してくれるって、それに勝る喜びはないよね」
スイーツは、人の心を映す鏡だと、私は思っています。
つくり手の状態は、味に出る。表情に出る。
無理して“完璧”を目指すよりも、
「今、自分が本当につくりたいものはなんだろう?」と立ち止まることが、時には必要なのかもしれません。
私たちが“甘さ”に救われるように、つくり手にとっての“甘やかし”もまた、大切な栄養です。
このコラムを読んでいるあなたが、もし今ちょっと疲れているなら――
無理に前向きにならなくてもいいので、まずは“好きだった味”を思い出してみてください。
それは、きっと今のあなたを、少しだけ楽にしてくれるはずです。
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